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当サイトでは食用の昆虫も販売しておりますが、実は野生の昆虫も種類によっては適切な処理を行うことで食べることができます。昆虫を捕まえること自体はそう難しくはないので、知識がなくても誰でも簡単に入手することができますが、日本にいる虫の中にも攻撃性の高い獰猛な虫や、命を落としてしまうほど強力な虫は存在します。昆虫は生食が危険視されていますが、どんな昆虫も加熱さえすれば食べられるというわけではないのです。そこで今回は、日本に生息する「食べられる虫」と「食べられない虫」をご紹介していきたいと思います。
※野生の虫を食べるという行為はあくまで自己責任です。この記事は野生の虫が安全に食べられることを保障するようなものではありません。あらかじめご了承くださいませ。
食べられる虫
セミ
夏の風物詩として人々に親しまれている蝉。アブラゼミ、クマゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシなど日本には数多くの種類が存在し、そのほとんどが美味しく食べられます。味を数値化する機械「味覚センサー」では、セミの味はアーモンドによく似ているという結果が出ているほどです。雄は捕獲後もよく鳴きますが、腹弁(後脚の付け根の下にある2枚貝のような形をした器官)の下を指で押して破ると鳴かなくなります。また、セミは成虫だけではなく幼虫も食べることができます。幼虫を捕まえるなら、地面から這い出てくる夕方6時頃が狙い目です。身が詰まった幼虫は成虫よりも食べ応えがありますが、土がたくさんついていますので、しっかりと洗い落としてから調理しましょう。そして少し手間がかかりますが、蝉の中でも最も美味しいと言われるのが羽化したての状態。昆虫食愛好家の中では「ソフトシェルセミ」と呼ばれ、ソフトな食感とクセのない味わいから初めてセミを食べるという方にもピッタリの食材です。ソフトシェルセミの手に入れるには羽化の時間帯を狙って捕獲するよりも、あらかじめ捕まえておいた幼虫をカーテンなどにひっかけておく方が楽です。夜間に羽化してくれます。羽化したセミをすぐに食べない場合は、茹でた後にしっかり水気をきって、ジップロックなど密封可能な袋に入れて冷凍しておくと良いでしょう。
バッタ
夏から秋にかけて公園や河川敷の草むらで多く見られるバッタ。高いジャンプ力を持つ虫で捕獲しにくいように思いますが、飛び跳ねても着地点を目で追い続けましょう。彼らにも大量があるので、執念深く追い続けることで動きが鈍くなります。慣れてくると簡単に捕まえられるようになってくるので、上達具合が楽めるのもバッタの醍醐味のひとつです。熟練者の中には、虫網を一切使用せずに素手だけで数多のバッタを捕まえる達人もいます。捕まえたバッタは1日絶食させて糞を出して、高温の油でサクっと揚げて食べるのがオススメ。口に障る羽と頸節(後脚のトゲが生えた部分)は外しておくのが良いのですが、この時に筋肉が詰まった腿節(ふともも)も外してしまわないようにご注意ください。バッタには様々な種類が存在しますが、その中でもとくに美味しいといわれているのがバッタの王様「トノサマバッタ」です。高い飛翔能力を持つバッタなので捕獲するのも一苦労ですが、バッタの王様というだけあって肉厚でしっかりとした食べ応えがあり、他のバッタにはない強い旨味を感じることができる食材です。なお、茹でた後に数日天日干しにしておくと、バグームのドライスナックのようなパリパリ食感のスナックにすることもできます。
ジョロウグモ
分類学上は昆虫ではないのですが、昆虫食としてカテゴライズされることの多いクモ。日本にいるクモにも食べられるものが多いのですが、その中でもとくに美味しいと言われているのがジョロウグモです。腹部が黄色と黒のストライプになっていて、脚部の節に黄色いラインが入っているのが特徴です。いかにも毒がありそうな見た目をしていますが、実は日本に生息する蜘蛛の大半が人体に影響がない微妙の毒しか持っておらず、その毒もタンパク質なので加熱により失活(化学物質などの活性が失われ、反応を起こさなくなる)します。危険といわれる毒を持つ蜘蛛は「セアカゴケグモ」や「ハイイロゴケグモ」などゴケグモ属の外来生物です。これらは見つけても近寄らないようにしましょう。ジョロウグモは巣を張って獲物を待つタイプなので見つけやすいのですが、動きは意外と素早いです。巣にいるジョロウグモは下に向かって動き始める習性があるので、捕まえる時は下方向から上へ向かって追い詰めるのがコツです。それとジョロウグモの雄と雌は、別種の蜘蛛かというくらい容姿やサイズに違いがあります。大きくて食べ応えがあるのは雌の方で、とくに秋頃に抱卵してお腹がパンパンになった雌はとても美味しいです。似たような蜘蛛に「ナガコガネグモ」という種類も存在しますが、これも食べることができますのでご安心ください。調理方法としては、丸ごと食べるなら素揚げ、お腹だけ食べるなら塩茹でがオススメです。
モンクロシャチホコ(サクラケムシ)
あまり耳馴染みがないかもしれませんが、モンクロシャチホコ(通称サクラケムシ)という蛾の幼虫は昆虫食愛好家の間ではメジャーな食材の1つです。その名のとおり桜の葉を食べる虫で、桜の香り成分「クマリン」を体に貯め込んだ桜の香りがする上品な食材です。モンクロシャチホコがいる木の根元には赤い糞が敷き詰められているので、見つけるのはそう難しくはないかと思います。モンクロシャチホコには毛がびっしりと生えていますが、毒は持っていないので素手でも触れることができます。しかし、毛虫の中には強力な毒を持つ種類も存在しますので、見分けがつかない場合は触れない・近寄らないようにしましょう。モンクロシャチホコの旬は羽化が始まる9月頃。モリモリと桜の葉を食べて育った幼虫が羽化のために続々と木の下へ降りてきます。そしてこれはあまり知られていない(知っててもやろうと思う人が少ない)のですが、サクラケムシはその糞にもたくさんのクマリンが含まれているので、食材として使うことができます。例えば乾燥させた糞を煮だせば紅茶のようなマイルドな飲み物になりますし、ウォッカに漬け込むと桜の香りが漂う上品なお酒に仕上がります。糞茶・糞酒といえば聞こえは悪いですが、雰囲気としてはジャコウネコのコーヒー(コピ・ルアク)のようなものです。今、「うんこ汁なんて飲まねぇよ!}と思った方、もし機会があれば騙されたと思ってチャレンジしてみてください。きっとご満足いただけるかと思います。
ファモラータオオモモブトハムシ
フェモラータオオモモブトハムシは、東南アジアの熱帯地域に広く分布するハムシ科の昆虫です。羽虫(はむし)というと素早く飛び回るハエ目の虫を想像してしまいますが、ハムシ科は甲虫目に属する分類で、コガネムシを小さくしたようなフォルムをしています。ただ、そのハムシ科の中でもフェモラータオオモモブトハムシの容姿は少し特殊で、その名のとおりバッタのように太い後ろ脚と、角度によって緑や青に見える鮮やかな色合いをしています。成虫も食べられますが、美味しいのはやっぱり幼虫。捕獲した後に数日間冷蔵庫で寝かせると、なんと不思議。杏仁豆腐のような甘い味わいになるのです。さて、なぜ東南アジアに分布するフェモラータオオモモブトハムシをここで紹介しているのかというと、2006年頃に三重県松坂市で定着していることが確認されたからです。ファモラータオオモモブトハムシの幼虫は毎年2~3月頃、葛の茎にゴールと呼ばれるコブをつくりその中で越冬します。葛は川の土手などに群生しているので、お近くにお住まいの方はぜひ探してみてください。但し、近年フェモラータオオモモブトハムシは隣接する津市でも発見され、分布の拡大が危惧されている外来生物です。捕獲した個体は、必ず〆てから持って帰りしましょう。
カミキリムシの幼虫
昆虫食の第一人者である内山昭一さんが最も美味しい虫として挙げているのが「カミキリムシ幼虫」です。カミキリムシの幼虫は樹木の幹を食害することで知られていますが、実は「マグロのトロ」と掲揚されるほど濃厚な脂身を持つ食材だというのです。入手困難な虫なので筆者も口にしたことはないのですが、昔は薪割りなどをしている時に手に入っていたそうです。今でも倒木や朽木を割ることで入手することもできますが、ただの朽木や倒木だろうと所有者の方にとっては貴重な財産です。それを無許可で破壊するようなことは決して行ってはいけません。必ず所有者の方に許可をもらって、マナーを守って採集するようにしましょう。また、後述する有毒のカミキリモドキにもよく似ていますので、見分けがつかない場合は決して口にしないようにしましょう。
スズメバチ
スズメバチ科に属する蜂は攻撃性が高いものが多く、種によっては人間の生活圏にも巣をつくります。そのため、知らず知らずのうちにスズメバチの防衛圏に入ってしまい刺されてしまうというケースも珍しくはありません。しかし、その味は非常に美味。岐阜県の山間部などで振舞われる蜂の子(はクロスズメバチの幼虫。通称”へぼ”)はアミノ酸を豊富に含む食材で、味覚センサーによるとウナギに近いという結果も出ています。クロスズメバチ以外の蜂(オオスズメバチやキイロスズメバチなどの大型のスズメバチ)も食べることができ、成虫・蛹・幼虫でそれぞれ違った味わいを楽しむことができます。但し、前述したとおりスズメバチの捕獲はたいへん危険なので、ご興味がおありの方は市販品を購入するか、専門家が捕獲したものを分けてもらうようにしましょう。
食べられない虫
ツチハンミョウ
真っ赤な頭をした「マメハンミョウ」や、鮮やかな赤色の「ヒラズゲンセイ」、ずんぐりむっくりで大きな腹を持つ「ヒメツチハンミョウ(上の写真)」など、ツチハンミョウ科の昆虫は猛毒”カンタリジン”を分泌します。カンタリジンは加熱しても分解されず、皮膚に触れると水疱性皮膚炎を引き起こします。また、カンタリジンが体内に入ると嘔吐・腹痛・血尿・肝不全・昏睡状態に陥ることもあり、最悪の場合、2~3時間で死に至ることもあります。絶対に食べないでください。
カミキリモドキ
アオカミキリモドキやキイロカミキリモドキ、ツマグロカミキリモドキなど、日本では40種のカミキリモドキ科の昆虫が確認されています。そのうち21種の卵、幼虫、蛹、成虫のすべての形態においてツチハンミョウ科の昆虫と同じ”カンタリジン”が含まれているので食べることができません。その名のとおりカミキリムシによく似ていますので、見分けがつかない場合は食べないのはもちろんのこと、触れない・近寄らないようにしましょう。
アオバアリガタハネカクシ
アオバアリガタハネカクシは体長6~7mm程度のアリのような見た目をした小さな虫です。この虫の体液には”ペデリン”という毒があり、食べることができません。体液が皮膚に触れてしまうと線状皮膚炎(水疱)になってしまいます。これがまるで火傷をしてしまったかのようにヒリヒリと傷むことから「やけど虫」と呼ばれることもあります。気付いたら自分の体を登っていたなんてこともありますが、叩き潰してしまうと目に体液が入ってしまうことがあります。体液が目に入ると激しく痛み、結膜炎や角膜潰瘍などを引き起こしてしまいますので、もし身体に付着したとしても叩き潰すようなことはせずに、そっと払いのけるようにしましょう。
キョウチクトウスズメ
キョウチクトウスズメは、幼虫の時に強い毒性を持つ植物「キョウチクトウ」を食べて育ちます。キョウチクトウの毒は花、葉、枝、根、果実すべて部位に含まれており、非常に強い毒は周辺の土壌にも広がって影響を与えてしまうほど強力です。キョウチクトウスズメ自体は毒耐性を持つので中毒になることはありませんが、人間が口すると嘔吐・下痢・倦怠感・めまいなどを引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。キョウチクトウスズメは形態(幼虫・蛹・成虫)を問わず、決して食べないでください。
オオゴマダラ
こちらはオオゴマダラという蝶目の昆虫です。キョウチクトウスズメと同じくキョウチクトウ科の植物を食べる習性がるので、食べることができません。
ジャコウアゲハ
こちらもオオゴマダラと同じく蝶目の昆虫です。ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサという植物を食べるのですが、この植物には腎毒性と発がん性のあるアリストロキア酸などの成分が含まれており、形態を問わず食べることはできません。
昆虫食に興味のある方へ
自分で虫を捕まえて食べるのはとても楽しいことですが、初めての昆虫食でその工程をこなすのはなかなか難しいものです。昆虫の加工食品は弊社が販売するもの以外にもたくさんの巣類があります。これから昆虫食デビューを考えている方々は、まずは市販の加工食品から試してみると良いかと思います。弊社ではオススメの昆虫食診断ツールも公開しておりますので、ご興味がおありの方はぜひお試しくださいませ。